商圏について知る
あなたのお店の商圏について知るために、はじめに消費者が食にお金を支出する場面について考えてみます。
例えば、デパ地下や屋台村(台湾の夜市のようなイメージ)、北海道うまいもの物産展、B級グルメ祭り、などといった食が集まる催しは最初から食べ物にお金を使う予定で訪れています。
それも1食としては高い予算があらかじめ決まっており、場合によってはお腹いっぱいまで何食でも食べようという気持ちで出かけています。
ですからこういう場所に出店すると、味がいいとか悪いよりも、見た目が美味しそうという演出が決め手で、ビジュアルでのアピールと呼び込みなどの活気がポイントになります。
SCのフードコートや高速道路のサービスエリア、道の駅、スキー場、健康ランド、学生食堂や社員食堂などの場合、お腹が減ったけれど食べる場所がここしかないから、という消去法的な選択肢で入店してくれます。
こういう場所は価格が安いお店は間違いなく売れますし、クオリティが低くてもそれほど問題ありません。
わたしもこういう場所での店舗で勤務したことが何度かあります。
海外での日本食フェアでスポット出店したこともありますが、軽く300食くらい毎日20万円以上売れます。
ただし、これらはイレギュラーなケースだと考えるべきで、同じ飲食業という括りで考えない方が頭がすっきりします。
飲食店は立地が決め手、と端的に言われますが、その背景には消費者の利用シーンを読み取らなければなりません。
街の飲食店はどうでしょうか。
出店先が住宅街なのか、繁華街なのか、会社が多いのか、といった周辺環境についてあなたは熟知していますか。
意外にも知っているようでよく分析していないことが多いです。
客観的事実ではなく、肌感の情報であることが多いのです。
飲食店は半径2km圏内のお客様が8割の売り上げを作るというのが通説ですが、お客様はどこからあなたのお店にやって来るのか本気で調べてみるとよいでしょう。
具体的には、アンケートを取ってみたり、お会計の際に訊いてみたりするのが手っ取り早くわかります。1か月1000人の客数があれば、延べ1000人のデータが拾えます。
うちのお店は大学の近くにあって学生街だから、学生が多いという人がいます。学生が多いからボリュームがあるワンコインランチで勝負するんやと言ってお店をオープンしたとします。
ところが地図にあなたのお店から半径2kmの円を書いてみると、西に1.8kmのところに大学があって、大学を中心に学生アパートや寮が集中したりします。
実はあなたのお店の東側の半円はほとんど戸建ての住居だったりするのです。
学生は学食で290円のカレーや320円のハンバーグ定食を食べてお昼を過ごしていますから、たとえあなたのお店がワンコインでランチをやっていたとしても、実はあなたのお店にくることはめったにないのです。
本当はあなたのお店で食事をする人は、近所のスーパーで買い物をする前に立ち寄る年配のご夫婦なのかもしれません。
こういうミスマッチがよくあります。
商圏についてはコンビニは300mとか、病院は1kmとか諸説がありますがあくまでも一般論として頭の片隅に入れておく程度にします。
ですが、物理的に近所にあればあるほど来店される可能性が高く、その頻度も高まります。
会社のお昼休憩が1時間なのに、片道20分もかけて昼食にでかるなんて考えられません。
極端な例ですが、どんなに美味しいお店がソウルの明洞にあっても、毎週末に韓国に遊びにいく人は皆無です。
ですからお店へ至る距離(時間)と経路は大切なのです。
出店前によく精査すべきでしたが、すでに運営されているのであれば住宅地図を購入して周囲に何があるのかを熟知し、要すれば歩いて実地検分することをお勧めします。
そうしてあなたのお店にやってくる潜在的なお客様が、いったい誰なのかを知るのです。
商圏を知るというのは、お客様ひとりひとりを知ることにもつながります。