売れ筋メニューは考えずに伸ばす。他のアイテムはよく精査する
飲食店に限らず食品に関してはベストセラーというものが必ずあって、寿命が長い商品だと50年くらい続いている商品があります。
それらの商品は、消費者にあまり気付かれないようにプチリニューアルをすることもあるそうですが、あくまでも10年とか20年という長いサイクルでの出来事。決して軸はブレません。
創業数十年という老舗の飲食店では看板メニューがあるから続いており、それを必死で守ることに注力します。開発した当事者なら思い入れはあるでしょうが、2世、3世ともなれば、純粋にお客に支持されているから守っていこうという意識でご商売されているのだと思います。
さて、あなたのお店が例え1年に満たないお店であっても、売れ筋メニューは必ず存在するはずです。もしAという商品が自信作であってもBという商品が売れているのであれば、Bを研ぎ澄ませて伸ばしていくべきです。
私はスパゲティのお店を運営していたことがありますが、自信作のカルボナーラよりも、鉄板アツアツのナポリタンが数倍売れていました。それがお客様の評価なのでナポリタンに注力しました。するとみるみる売り上げを伸ばし、おかげさまでそのお店はナポリタンで成功しました。
調理経験豊富なキッチンメインの店主の場合は、思い入れが強いためか最後まで自分が売りたいメニューに固執しがちです。しかし、お客が求めている「結果」こそが「客観的な事実」なのです。まずはそこに気付くことが必要です。
次に、売れ筋メニューの他のアイテムについて考えます。
世の中、一つのメニューだけで末永く商売できるほど甘くありません。お店側からはなかなか考えられない状況が結構あるものです。
例えば、おばあちゃんが息子夫婦と孫を連れて日曜の夜に外食するとします。
孫はハンバーグが大好き、でもおばあちゃんはお肉が食べられない。でも孫が食べたいというから、ハンバーグレストランに連れて行くのです。で、おばあちゃんはサイドメニューのサンドイッチを食べていたりするのです。
これが、孫がそばアレルギーでおそば屋さんに入ったら、かつ丼を食べるんですよ。
ラーメン屋のチャーハンと餃子が好きだっていう友人がいます。彼はラーメンを食べないでチャーハンばかり注文して毎週フェイスブックに投稿しています。
外食って、こういう利用シーンも考えないとならないんです。
だから、あなたが自家製めんにこだわったうどん屋さんを営業していたとしても、うどんのバリエーションばかりを増やしてもだめなんです。ちょっと違った視点で、うどんが食べられないお客様のために、別のメニューも作るんです。それもうどん屋さんのイメージからブレずに。ハンバーガーのお店で海鮮丼を売っちゃいけません。
それと、リピーターでも売れ筋メニューから浮気する人がいるのです。
イチオシメニューがある繁盛店に初めての訪れても、あえて売れ筋を注文しない変わり者も少なからずいます。
3人で来たから1人は別なものを注文しようというビミョーな集団心理もあります。
こういうパターンは結構見逃せません。だから、売れ筋以外のメニューも少し用意します。
この「少し用意する」というのが大切。経験上、メニューを増やせば増やすほど注文が分散し、ロスが発生して原価率を押し上げ、オペレーションが複雑になりクオリティやサービスが低下しがちです。
お客様のためと思ってやったことが、結果として双方のためにならないという事故になってしまうことでしょう。
ですから、お店の規模や業態によって売れ筋メニュー以外のアイテムは精査すべきなのです。
なお、死筋メニューでも一部の熱狂的なファンが付いている商品があります。これをやめるかどうかジレンマに悩まされますが、別な機会に触れたいと思います。