お客はわざと待たせる
このタイトルは乱暴で賛否両論があると思いますが、一つの意見だと思って読んでください。
世の中には行列ができるお店というのがあります。行列がまた行列を呼ぶというプラスのサイクルになってお店はどんどん賑わいます。ところがこういうお店も行列が途切れると、お客が寄り付かなくなります。中身は全然変わらないのに。実に不思議なものです。その理由は次のようなものです。
人間には混雑しているところを避けたいという欲求と、賑わっているところに寄り付きたいという欲求があって、混雑と賑わいというものは似て非なるものなのです。どこが違うかをわかりやすく説明しますと、混雑は日常の範囲であって勝手知ったるところ、賑わっているところは非日常の世界でまだ見ぬところだというところです。ですから、あなたのお店が例えチェーン店であったとしても、「早さ」をお客様へ提供する価値にしている牛丼チェーンでもない限り、待たせることが価値になり得るのです。外食産業は基本的にレジャーの一部で、非日常であることが多いためです。だから多くの人はスマホで料理の写真を撮って、SNSにアップするのです。1食千円にも満たない外食ですらレジャーになるくらい、多くの人は平凡な日々を送っていることが伺えます。
行列の話に戻しますと、お昼休みの時間が決まっているサラリーマンであっても、行列のできるラーメン屋さんで並んでいる姿をよく目にしますよね。ランチタイムにですよ。文句を言うどころか、並んでいるのです。
ところが、お店で仕事をしている立場で振り返ると、「そんなことはない」、お客は待たせたらたいてい怒ってクレームになる、という反論があるかと思います。
これには、実はもう一つポイントがあります。
お客様が待つことに不満を言うのは、並んで席につくまでの時間なのではなく、席についてから注文を受けるまでの時間が長いことと、注文してから提供するまでの時間が長いことに対して怒るのです。そして、そういうお客様は並び始めた時間からカウントして、待たされた時間の合計に対して怒り始めるので、怒りが2倍にも3倍にもなってクレームになるのです。
もし、あなたのお店の厨房がオープンキッチンで調理している姿が見えたり、たこ焼きなどの実演製造販売のお店であれば、最大限の速度と手際に良さで調理している姿をアピールできますので、お客の不満を買うことは少ないでしょう。そういうご商売を経験したことがあればイメージしやすいかと思います。もしピンと来なければ、デパ地下にそういう業態がたくさんありますので、見てみるとわかるでしょう。
タイトルは「お客はわざと待たせる」ですが、その意味がお分かりいただけたでしょうか。そういう仕掛け作りも考えてみましょう。