小さな飲食店が細部にこだわることが重要な理由|小さな居酒屋さんで感じたこと
今日は「小さな飲食店が細部にこだわることが重要な理由」と題してお話をします。
筆者は先日、小さな居酒屋さんを利用しました。友人がひいきにしている馴染みの居酒屋さんで、初めて訪れた私も気に入りました。今日はなぜ気に入ったのか、その理由を考え、事例研究的な記事を書いてみます。
ビール1杯にもマスターの情熱を感じる
筆者はビールが好きで、ほぼ毎日自宅でも飲んでいます。
日常的に車の運転をすることも少ないですから、休日はお昼の時間帯であっても遠慮なく飲むことがあります。
ですから、どこの居酒屋さんに行っても、まずはビールを注文し、10杯目くらいまでビールを飲んで終了することもあります。
筆者のような人間にとっては、生ビール付きの飲み放題が一番ありがたいのですが、今回利用した小さな居酒屋さんでは、小ぶりのビアグラスで1杯580円とそこそこのお値段です。
ところが、グラスがとてもキレイに磨かれていて(もしかしたら新品だったのかもしれません)、適度に冷やされていました。
泡もベストな比率で、ビール1杯ではありますが、とてもクオリティが高いと感じました。正直言って、マスターのこだわりを感じました。
大げさに聞こえるかもしれませんが、こういったきめ細かい配慮を感じると、いつもと違ってありがたくチビチビといただくものです。そうして、いつもよりビールが美味しいと感じるものなのです。
樽の中にあるビールは変わらなくても、状態を最良にすると美味しくなる、もしくは美味しく感じる例です。
ですから、お料理も盛り付け方や適温、器が磨かれているなど、料理の味以外の要素がお客さんの味覚に影響するということが予想されます。
また女性と男性では感覚が異なりますので、異性の視点を取りいれるのも大切だと感じました。
飲み放題では感じ取れない「美味しさ」
居酒屋さんでよく飲み放題プランがありますが、小さな居酒屋さんでは飲み放題プランはあまり見かけません。
同様に食べ放題プランがある焼肉屋さんやブッフェなどもありますが、小さな飲食店ではこれもお目にかかりません。
食べ放題のプランがあるお店に対して、多くの人は商品クオリティが低いイメージを持っていると思います。
実際、メニューが限定されていて、廉価なメニューに絞られていることも多く、それがクオリティが低いと考えられている一因にもなっているのではないでしょうか。
飲み放題も同様に、たいていの場合はメニューが限られ、プラス500円で生ビール付き、といったプランも多く存在します。これらを否定するわけではありませんし、そういったニーズがあることも事実です。
話を戻しますが、今回利用した小さな居酒屋さんは、質の高い日本酒を取り揃えており、値段もそこそこしますが、実に美味しいものばかりでした。
これがもし飲み放題だとしたら、お客もありがたみを感じることなくグビグビ飲んでしまうでしょうから、せっかく厳選された質の高い日本酒も、台無しになってしまうかもしれません。
前項で最良の状態で提供する、ということに触れましたが、同様にして最良の状態で提供されたものを、最良の時間をかけて飲む(食べる)ということも大切だと感じます。
制限時間付きの食べ飲み放題プランでは、演出できないと思います。
これには価格も密接に関与しています。
いつもより割高な料金を払っていれば、時間をかけてありがたくいただこう、という心理が誰しも働くでしょう。
価格と価値については、その辺のバランスまで緻密に計算する必要があるのかもしれません。もう少し補足しますと、お店で商品と価格を決めるとき、
- 商品の設計をして原価計算をする
- 原価率から適正な利益を割り出して、価格を決める
というプロセスを経て価格設定をするのが一般的ですが、
- お客がその商品を適切な時間をかけて食べ、五感をフルに活用して美味しいと思ってもらうには、何分かけるのがよいか
- それだけの時間をかけて食べてもらい、「ちょっと高かったけれど、本当に美味しかったね」と思ってもらえる価格はいくらなのか
というところまで計算して決めるのも、ポイントの1つなのかもしれません。一考の余地ありです。
食べ物のボリュームとクオリティ
この居酒屋さんでは、決してアイテム数は多くないのですが、お料理のレベルも高いと感じました。一品一品のボリュームはありませんし、お値段もそこそこするのはお酒と同じです。
多くの人は、経験上食べた瞬間で冷凍食材を使用しているかどうかの見分けがつきますが、この居酒屋さんでも冷凍食材を使用しています。
でもそのまま使用していないのです。
ちょっとしたスパイスを加えたり、ボイルして使用する食材を揚げたりして、食卓や普通の居酒屋さんで食べられないようなお料理に仕上がっているのです。
また、豚串を扱わずに厚めの豚ステーキにするなどして、ボリュームはなくても、良い素材を柔らかく美味しいいただくことができます。このあたりにも学ぶべきところがあると思います。
約3時間滞在し、2人でビール2杯ずつ、冷酒4合、お通しとお料理4品で1人4,000円くらいでしたが、とても満足でまた必ず利用したいと思いました。
同じ値段で食べ飲み放題でも、もう行きたくないというお店もありますから。お料理の質と、価格、それと今回は時間軸についても、考えさせられるものがありました。
小さな飲食店が繁盛するヒントになる内容だと思います。