メニュー開発の自己満足
今日はメニュー開発において、あなたの個人的な思い入れがどう影響するかについてお話をします。
私は、飲食店の本部や店舗に入って商品開発の仕事をしたことがあります。
食品工場の品質管理室で商品開発に携わった経験もあります。
会社組織で商品やメニューの開発をする場合、マーケティング部門が主体となった会議体でコンセプトが決まり、それに沿ったカタチで開発が進められます。最終的な決定は社長が試食をして行われることが多く、開発担当者の主観よりも決裁権者の主観で決まることが多く、開発担当者はむしろ客観的な視点で冷静に判断ができます。
一方、小さな飲食店のメニュー開発はあなた自身が中心となりスタッフに意見を訊くか、あなたの独断で進められることが多いと思います。
両者は主観と客観という対極にあり、主観的に開発ができるほうがはるかにやりがいもあり、仕事としても数倍面白味があります。
ところがここに大きな落とし穴があります。
元来、小さな飲食店を開業した人や、雇われの身であっても店長職にある人は、自己顕示欲が強い傾向にあることが多く、自らの思い入れがメニュー開発に色濃く影響を与えます。
ですから、あなたが食べてみて量が少ないと感じたらもっと増量する、味が薄いと感じたら濃くする、辛いものが好きだから辛めのメニューを増やすといった行動に陥りがちです。
あなたのお店ですから、あなたに共感するお客様が集って賑わえばそれがベストなのですが、お店を通じてあなたのコミュニティを作ることが最重要課題の場合でもなければ、ナチュラルな視点でメニュー開発をすべきです。
そして想定するお客様の層に好まれるカタチに仕上げていくということが重要になってきます。
そのためには、あなたが開発しようとしているメニューの標準形が、どんなものなのかについて多くの情報を集めて考え、多くの人に食べてもらって意見を訊くべきです。
自分が美味しいと思ったものを食べてもらいたいと誰もが思うのです。
だから飲食業をやっているのです。
でも過度な自己満足で生き残っていける人はその世界でプロ中のプロ、世界に名の知れた一流シェフだけだと心してください。
ラーメン屋さんも自家製めんが普及し、スープが濃い目の主張するお店が増えました。生涯修行しますというようなラーメンに命をかける情熱をお客様に誇示する店主も多く、お客様からの支持を集めています。
それでも長年にわたって生き残っているお店というのは、どちらかというと正統派で万人受けするメニューがメインのお店であることが多いのです。
ちょっと立ち止まって、あなたがメニューを通じて主張したいコトは多くのお客様に受け入れられるコトなのかを冷静に考えながら時間をかけて開発してみてはいかがでしょうか。
余談ですが、世の中には年配者はカラダに優しそうな食べ物を好む食べというイメージがあります。
毎日漬物と納豆、豆腐を食べているというようなイメージです。
でもそれは、戦前の昭和一桁に生まれたあなたのおじいちゃんおばあちゃんの世代の話であって、終戦前後に生まれた世代はそうではありません。
結構、焼きそばやお好み焼き、揚げ物などが好きだったりします。
むしろ20代の若い人達のほうが1日2食くらいの粗食だったりするのです。
いま20代の人のご両親は昭和40年代の高度経済成長期生まれで、バブルの過渡期に学生時代を過ごして就職した世代が多いのです。学生時代、ファミレスやファストフードが人気のバイト先だった時代です。
そういう人たちが、どんな家庭を築いて毎日どんな食生活をしていたのか、どんなところで外食をしていたのか、考えてみると面白いですよ。
10年ひと昔と言われますが、いまを知るとどういう食べ物が支持されるのかわかるものです。